ADLとIADLの基本
日常生活動作(ADL)と手段的日常生活動作(IADL)の違いを整理し、リハビリテーションや介護での見方と支援のポイントを解説します。

ADLとIADLは何が違うのか
ADL(Activities of Daily Living、日常生活動作)は、食事、更衣、入浴、トイレ、移動など、毎日の生活を送るために基本的に必要な動作を指します。IADL(Instrumental Activities of Daily Living、手段的日常生活動作)は、買い物、料理、掃除、洗濯、公共交通の利用、服薬管理、金銭管理など、より複雑で、個人が社会の中で自立して生活するために必要な動作を指します。
違いを一言でいうと、ADLは「自分自身の身の回りを整える動作」、IADLは「生活を運営するための動作」です。ADLが低下すると直接的な介助が必要になりやすく、IADLが低下すると、たとえ身の回りの動作ができても、生活全体の自立度が下がる可能性があります。
なぜADLとIADLを分けて理解する必要があるのか
リハビリテーションでは、単に筋力や関節可動域を改善するだけでなく、その人がどのような生活を望むかを踏まえて目標を設定します。ADLとIADLを分けて評価することで、どの動作ができて、どこに支援が必要かを具体的に把握できます。
WHOの国際生活機能分類(ICF)は、健康状態だけでなく、心身機能、活動、参加、環境因子などを含めて生活機能を捉える枠組みです(https://www.who.int/classifications/icf/en/)。ADLはICFの「活動」の一部として、IADLはより広い生活参加に関わる活動として整理できます。日本リハビリテーション医学会も、リハビリテーション医療の対象や学術情報を発信しており、生活機能の視点が重視されています(https://www.jarm.or.jp/)。
ADLにはどのような項目があるのか
ADLの代表的な項目には、次のようなものがあります。
- 食事:食べ物を口に運ぶ、咀嚼する、飲み込む
- 整容:顔を洗う、歯を磨く、髪を整える
- 更衣:上衣やズボンを着る、ボタンを留める
- 排泄:トイレへの移動、衣服の上げ下げ、後始末
- 入浴:浴槽に入る、体を洗う、上がる
- 移動:ベッドから立ち上がる、歩く、階段を昇る
これらは、介護保険制度やリハビリテーション現場でよく用いられる評価表でも確認されます。評価の詳細は施設や制度によって異なるため、実際の判断は所属機関のマニュアルや公的なガイドラインを参照してください。
IADLにはどのような項目があるのか
IADLには、次のような項目が含まれます。
- 買い物:必要なものを選び、運ぶ、支払う
- 料理:献立を考え、調理し、後片付けする
- 掃除:掃除機をかける、拭き掃除をする
- 洗濯:洗濯機を操作する、干す、畳む
- 交通:バスや電車を調べて利用する、運転する
- 服薬:処方された薬を正しく服用する
- 金銭管理:公共料金の支払い、銀行での手続き
- 電話や通信:連絡を取る、必要事項を伝える
IADLは、認知機能や判断力の影響を受けやすい点が特徴です。身体機能が保たれていても、計画を立てる、順序立てて実行する、危険を予測する力が低下すると、IADLが難しくなることがあります。
ADLとIADLはどのように評価するのか
評価では、できるかできないかだけでなく、介助の量や見守りの程度、使用している道具や環境も確認します。たとえば、歩行が可能でも、買い物の途中で休む場所がない、支払いの手順が分からないという場合は、IADLの支援が必要かもしれません。
評価の目的は、できないことを責めることではなく、安全に生活するためにどのような工夫や支援が有効かを見つけることです。評価結果は、リハビリテーション職、看護職、介護職、医師などで共有し、本人や家族の意向と合わせて目標を話し合います。
支援の優先順位はどのように考えるのか
支援を考えるときは、次のような順序で整理すると役立ちます。
- 生命や安全に関わる動作か
- 本人が最も困っている動作は何か
- 一人でできる部分と介助が必要な部分はどこか
- 環境調整や道具の工夫で改善できるか
- リハビリテーションで改善を目指すか、支援で補うか
- 支援者への負担が大きすぎないか
この順序はあくまで一例です。医学的な判断や制度上の手続きが必要な場合は、必ず医師やケアマネジャー、自治体の窓口などに確認してください。
ADLとIADLの比較表
| 項目 | ADL | IADL |
|---|---|---|
| 目的 | 身の回りの基本的な生活動作 | 社会生活を営むための複雑な動作 |
| 例 | 食事、更衣、入浴、トイレ、移動 | 買い物、料理、掃除、交通、服薬、金銭管理 |
| 低下の影響 | 直接的な介助が必要になりやすい | 生活全体の自立度や社会参加が下がりやすい |
| 関連する機能 | 身体機能、基本的な認知機能 | 計画力、判断力、記憶、社会的交流 |
| 支援の例 | 食事介助、移動介助、入浴介助 | 買い物同行、服薬カレンダー、金銭管理支援 |
家庭ではどのように観察すればよいのか
家庭で観察するときは、日常の一場面をそのまま見ることが有用です。たとえば、朝の支度、食事の準備、ゴミ出し、薬を飲む場面などで、次の点に注目します。
- 動作の順序が分からなくなっていないか
- 時間がかかりすぎていないか
- 危険な行動がないか
- 以前はできていたことが急にできなくなっていないか
- 疲れやすさや痛みがないか
急な変化やけがのリスクがある場合は、自己判断で訓練を続けず、医療機関や介護サービスに相談してください。
リハビリテーションではどう活かすのか
リハビリテーションでは、ADLの改善を目指すことが多い一方で、IADLは生活の質や社会参加に直結します。たとえば、椅子からの立ち上がり練習は移動能力の改善につながり、バランス練習は転倒予防に役立ちます。また、歩行補助具の選び方や住まいの環境調整は、ADLとIADLの両方を支えます。
自宅で歩行練習を始める前に(/home-exercise/home-walking-practice/)では、安全に練習を進めるための確認点を整理しています。椅子からの立ち上がり練習(/home-exercise/chair-stand-exercise/)や自宅でできるバランス練習(/home-exercise/balance-training-at-home/)も、ADLの維持改善に役立つ内容です。
IADLを支えるには、介護における日常生活支援の基本(/caregiving-support/daily-living-support-basics/)で触れているように、本人のできる部分を活かしながら、必要な部分を補う視点が重要です。
よくある質問
Q. ADLが保たれていればIADLも問題ないと考えてよいですか。
いいえ。ADLができても、IADLに困難がある場合があります。特に認知機能や判断力の変化があるときは、IADLの確認が重要です。
Q. IADLの低下は加齢によるものですか。
加齢に伴い変化することはありますが、急な低下や本人が困っている場合は、病気や環境の変化が関係していることがあります。医療機関や専門職に相談してください。
Q. 評価は誰が行うのですか。
医師、理学療法士、作業療法士、看護師、介護福祉士など、多職種で関わることが一般的です。評価の内容は目的や制度によって異なります。
Q. 家族ができることは何ですか。
本人のできる動作を確認し、危険がない範囲で見守ること、環境を整えること、専門職に相談することが基本です。介護する人のセルフケア(/caregiving-support/caregiver-self-care/)も忘れずにしてください。
Q. 訓練すればIADLは改善しますか。
改善の可能性はありますが、原因や状態によって異なります。目標や方法は、リハビリテーション専門職と相談して決めてください。
Q. 制度やサービスの利用はどうすればよいですか。
介護保険制度や自治体の支援内容は変わることがあります。最新の情報は、自治体の窓口や担当のケアマネジャー、医療機関に確認してください。
まとめ
ADLは基本的な生活動作、IADLは生活を運営するための複雑な動作です。どちらも、その人の自立した生活を支える大切な視点です。評価では、できることと難しいことを丁寧に確認し、安全と本人の意向を中心に支援を組み立てます。判断に迷う場合や状態が変化した場合は、リハビリテーション専門職や医療・介護の担当者に相談してください。


