医療・介護専門職との連絡のコツ
訪問リハビリやケアマネジャーに日々の様子を正確に伝えるための、記録の整理法と連絡の型を解説します。

なぜ「うまく伝わらない」と感じるのか
伝えたい情報が多いのに、訪問の短い時間では言葉が足りず、後から「あのことも話せばよかった」と悔やむ。これは介護者が情報の整理を個人の記憶に頼っているために起こります。日本作業療法士協会が一般向けに情報を公開しているように、リハビリ職は生活の具体的な場面を知ることで支援を組み立てます(https://www.jaot.or.jp/)。つまり、制度や専門用語よりも「いつ、どこで、何が、どう困ったか」を渡すことが出発点になります。日本リハビリテーション医学会も市民向けの情報発信を行っており、専門職と生活者をつなぐ窓口が整いつつあります(https://www.jarm.or.jp/)。
何を記録すればよいのか
記録は「事実」と「解釈」を分けて書きます。事実は観察できる行動、解釈はあなたの推測です。たとえば「14時にトイレへ行こうとして、立ち上がりに30秒かかった。手すりを2回握り直した」は事実、「腰が痛そうだった」は解釈です。解釈は大切な気づきですが、事実と混ざると専門職が原因を絞れなくなります。用紙は1日1行で十分です。日付、時刻、場所、動作、本人の言葉、あなたがした対応。この5項目を埋めるだけで、伝える情報の質が変わります。
訪問前にどう整理すればよいか
ノートを頭から読み上げるのではなく、3つに絞ります。第一に「前回の依頼がどうなったか」、第二に「新しく出た変化」、第三に「今いちばん困っていること」です。順番を固定すると、限られた訪問時間でも聞き漏らしが減ります。前回の依頼とは、歩行練習の回数、椅子からの立ち上がり方、手すりの位置など、担当者が提案した具体的な行動です。実行できた日とできなかった日を数えるだけでも、評価の材料になります。
どの場面を切り取ればよいか
専門職が知りたいのは「できるか」ではなく「生活の中で実際にどうしているか」です。朝の着替え、食事、トイレ、入浴、外出、就寝前の6場面を思い出し、それぞれ1行ずつ書きます。特に変化が出やすいのは、起き上がり、立ち上がり、歩き始め、方向転換、段差、物を運ぶ場面です。これらは関節可動域運動やバランス練習の効果を確認する手がかりにもなります。自宅でできるバランス練習の記事も、記録する視点の参考になります(/home-exercise/balance-training-at-home/)。
比較表とチェックリストをどう使うか
伝える内容を「事実」「解釈」「依頼」の3列に分けた表を作ると、会話が整理されます。次の表は、記録をそのまま渡すときの判断基準として使えます。
| 区分 | 書く内容の例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 事実 | 時刻、場所、動作、所要時間、使った道具 | 形容詞を避け、数や回数で書く |
| 解釈 | 痛そう、疲れやすそう、不安そう | 「そう見えた」と限定して書く |
| 依頼 | 次回見てほしい動作、練習量の相談 | 質問を1つか2つに絞る |
| 共有 | 服薬、受診、睡眠、食事量の変化 | 医療的な判断は専門職に委ねる |
| 保留 | 自分では判断できないこと | 連絡手段と期限を決めておく |
この表を訪問前に見返し、依頼が「はい」「いいえ」で答えられる形になっているか確認します。「もっと歩かせたほうがよいですか」より「屋内で手すりを使って10歩、1日2回でよいですか」のほうが、次の行動が決まります。
誰に何を伝えるのか
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、ケアマネジャー、医師では、判断できる範囲が異なります。歩行や立ち上がりの量はリハビリ職、食事や嚥下、服薬、体調変化は看護師や医師、サービス調整はケアマネジャーが中心です。理学療法と作業療法の違いを踏まえると、歩行は理学療法、着替えや調理などの生活動作は作業療法に相談しやすくなります(/rehabilitation-basics/physical-therapy-and-occupational-therapy/)。一人で全部を抱えず、窓口を分けて伝えるのが現実的です。
うまく伝わらないときはどうするか
「伝えたのに変わらない」と感じたら、事実の量を増やすより、依頼の形を変えます。客観的な記録が2週間分あれば、支援内容の見直しを相談する材料になります。ただし、痛みの増加、発熱、急な歩行困難、意識の変化は、リハビリの練習量では説明できません。医療的な判断が必要な変化は、自己判断せず、かかりつけ医や訪問看護など、現在の体制に沿った窓口へ速やかに連絡してください。制度や報酬、サービス内容は改定されるため、最新の公式情報を確認することが前提です。
記録を続けるにはどうすればよいか
完璧な記録は続きません。1日1行、気づいた瞬間にメモし、夜に3列へ振り分ける。これだけで十分です。介護する人のセルフケアも忘れないでください。記録の負担が大きいと感じたら、書く項目を減らし、訪問時に口頭で補う方法へ切り替えます(/caregiving-support/caregiver-self-care/)。暮らしの支援の基本に立ち返ると、記録は専門職を試すためではなく、本人の生活を一緒に整えるための道具です(/caregiving-support/daily-living-support-basics/)。次回の訪問で、最初に渡す1枚を用意するところから始めてみてください。


